「マルチメディア方法,マルチメディアシステム,及びアイテム」事件

平成24年7月18日判決言渡
平成23年(行ケ)第10380号
審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成24年7月4日

 

【概要】

原告が「ワイヤレス接続ではロボット主要部に電源を供給することができないから,引用発明においてワイヤレス接続を採用することは不可能であり,阻害事由がある」旨を主張したことに対し、裁判所は、引用発明の目的と直接関係がない事項であるとし、阻害要因を否定した事案。

【本事案のお言葉】

"ゲーム機本体からロボット主要部に電源を供給することは,引用例に記載された発明が達成しようとした目的と直接の関係はない。そして,玩具体への電源供給を電池などにより行うことは周知技術にすぎないものであり,電源供給をゲーム機から行わなくとも玩具体を動作可能とすることは,当業者が適宜なし得ることにすぎない。よって,引用発明においてワイヤレス接続を適用することへの阻害事由があるとの原告の上記主張は採用することができない"

(by裁判長裁判官 塩月秀平 さま)

 

■裁判所の判断(抜粋):

3 情報アイテムとホストシステムとの情報交換のための接続(審決における相違点1の判断)について
 引用例では,ゲーム機本体(本願発明のホストシステムに相当)と玩具体(本願発明の情報アイテムに相当)との情報交換につき,ケーブルによる電気的接続を採用する旨の記載はあるものの,ワイヤレス接続に関する記載はない。しかし,引用例に記載された発明が解決しようとする課題,課題を解決するための手段,及び特許請求の範囲からみて,ゲーム機本体が玩具体主要部の不揮発性メモリからデータを読み取る手段についての限定は認められず,引用例における電気的接続は一実施例にすぎないと認められる。そして,引用発明におけるゲーム機本体と玩具体との間の接続がケーブルによる電気的接続ではなくワイヤレス接続であっても,ゲーム機本体が玩具体(ロボット玩具)のデータ(特性データや過去の対戦データ,識別部のスイッチのセット状態など)を読み取り可能であれば,玩具体(ロボット玩具)を特定してロボット玩具に対応するキャラクターをモニター装置に表示することは可能であり,また,対戦データを玩具体の不揮発性メモリに記録することも可能であって,ゲーム機本体とモニター装置に表示されるロボットと対応する実際の玩具体の情報交換を可能にしてゲームの興趣性を高めようとした引用発明の目的を達成することができる。そうすると,ワイヤレスによる通信・情報交換が周知技術であることからすれば,引用発明におけるケーブルによる電気的接続をワイヤレス接続に置き換えることは,当業者にとって容易想到というべきである。

 原告は,ワイヤレス接続ではロボット主要部に電源を供給することができないから,引用発明においてワイヤレス接続を採用することは不可能であり,阻害事由がある旨主張するが,ゲーム機本体からロボット主要部に電源を供給することは,引用例に記載された発明が達成しようとした目的と直接の関係はない。そして,玩具体への電源供給を電池などにより行うことは周知技術にすぎないものであり,電源供給をゲーム機から行わなくとも玩具体を動作可能とすることは,当業者が適宜なし得ることにすぎない。よって,引用発明においてワイヤレス接続を適用することへの阻害事由があるとの原告の上記主張は採用することができない。よって,審決の相違点1に判断に誤りはない。

4 情報アイテムとホストシステムとの近接条件(審決における相違点2の判断)について  本願明細書(甲6,9)には,本願発明におけるホストシステムと分散アイテムとの「近接条件」に関して,「・・・ホスト装置が,分散アイテムが適切な近傍内にあるかどうかを検出する。これは約1メーターの距離とすることができ,あるいは同じ部屋内の存在であってもよい」(甲9の6頁10行~13行)と記載されていることなどからすれば,ユーザが,本願発明に係るシステムを実際に利用している現場において,ホストシステムと情報アイテムとの距離が近接していると物理的に認識可能な程度の範囲内であること(具体的には,ユーザのいる部屋内か,ユーザの目視可能な程度の範囲内)を意味するものと認められる。

 また,引用発明は,前記のとおり,3次元的な玩具体とゲーム機とを融合させて,玩具体と対応するキャラクターをモニター装置に表示するようにしたゲーム装置に関するものであり,モニター装置に表示されるロボットと対応する実際の玩具体を「近くに置いて」ゲームを操作できるようにし,プレーヤーの感情移入をしやすくしてゲームの興趣性を高めることを目的とするものであるから,ゲーム機本体と玩具体とをケーブル接続により接続してゲームを操作するのは,プレーヤーが,モニター装置と玩具体との距離が近接していると認識可能な程度の範囲内にモニター装置と玩具体が存在する場合(具体的には,ユーザのいる部屋内か,ユーザが目視可能な程度の範囲内)であるものと認められる。

 そうすると,本願発明における「近接条件」と,引用発明において,モニター装置と玩具体とを「近くに置いて」ゲームを操作することとは,実質的な距離範囲として異なるものではないと解せられる。

 そして,ワイヤレス接続による通信において通信可能な範囲を超えると通信ができなくなることは技術的に自明であるところ,引用発明においてゲーム機本体と玩具体との「接続」に周知技術である「ワイヤレス接続」を採用した場合に,「ワイヤレス接続により通信可能な範囲」をモニター装置と玩具体とを「近くに置いて」ゲームを操作する範囲とすることは,当業者にとって自明のことである。その結果,引用発明においては,プレーヤがモニター装置と玩具体とを「近くに置いて」ゲームを操作する範囲にある場合にのみ,「勝者となった玩具体の不揮発性メモリにはその対戦データが記録され」ることなるところ,これは本願発明の「近接条件を分散アイテムが満たす限り,情報アイテムが,前記ホストシステムが生成した結果に追随させることを許容する」ことに対応するものである。

 よって,引用発明において,「近接条件を分散アイテムが満たす限り」において,情報アイテムがホストシステムが生成した結果に追随させることを許容する構成を採用することは当業者にとって容易想到であるというべきである。審決の相違点2に関する判断に誤りはない。

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