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2012.7.11-「光源装置およびこの光源装置を用いた照明装置」事件(完成品の納品後も秘密保持義務を負うとして出願前の納品による新規性喪失を否定した事例)

平成24年7月11日判決言渡

平成23年(行ケ)第10271号

審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成24年5月9日

【概要】

  共同開発事業を実施するにあたり締結された秘密保持契約につき、
完成品の納品後も、秘密保持義務を負うのか否かが争われた事案。

【本事案のお言葉】

 原告は,完成品は本件秘密保持契約の適用外であると主張するが,特許出願までの間は契約対象の技術情報についての秘密保持義務があることは当然であって,原告の主張は理由がない。

(by裁判長裁判官 塩月秀平 さま)

 

■裁判所の判断(抜粋):

 甲5及び弁論の全趣旨によれば,原告は電気機械器具の製造販売及び工事施工等を業とする会社であり,被告は,光学機器,照明用光学製品等の製造販売等を業とする会社であるところ,原告と被告は,平成19年12月13日,被告の開発したLEDフラットパネル製品に関する共同開発事業を実施することとし,その際,被告が原告に提供した製品に係る技術的情報及びノウハウなどの秘密情報について,下記の約定を含む本件秘密保持契約(甲5)を締結したことが認められる。


(本契約の目的)
第1条 甲(判決注:被告)および乙(判決注:原告)は,甲の開発したLEDフラットパネル製品(以下「本製品」という。)についての甲と乙とによる共同開発事業(以下「本件事業」という。)の是非を検討する目的において,自己が保有する情報を,相手方(以下「被開示者」という。)に対して開示または提供し,被開示者はこれを秘密情報として開示または提供を受ける。

(適用範囲)
第2条 本契約に定める規定は,甲乙間の本件事業に関するすべての交渉において提供または開示される情報および資料に適用される。ただし,本契約締結後,甲乙間において書面により本契約に定める規定と異なる合意をする場合は,当該合意が本契約に優先する。

(秘密情報の定義)
第3条 本契約において秘密情報とは,情報を開示する者(以下「開示者」という。)が被開示者に対し,口頭,書面,電子メールまたは電子記憶媒体等その方法もしくは手段の如何を問わず,またその形態の有形無形をも問わず,開示者が被開示者に対して書面または電磁的記録をもって秘密である旨を明示したうえで開示または提供する営業情報,ノウハウ,技術情報および経営情報等一切の情報ならびに資料をいう。なお,被開示者において秘密情報を複製,翻案等した場合は,複製・翻案等した資料についても秘密情報と同様とする。
2 開示者が被開示者に対し,開示または提供後10日以内に,書面または電磁的記録をもって,対象を特定し,秘密である旨を明示した情報および資料についても,秘密情報に含まれるものとする。
3 前2項の規定にかかわらず,甲が乙に提供した本製品にかかる技術的情報およびノウハウはすべて秘密情報に含まれるものとする。

(秘密情報についての秘密保持義務)
第5条 被開示者は,第6条第1項に規定される利用を除き,秘密情報について開示者のために厳に秘密を保持しなければならず,開示者の書面による事前の同意なくして,その全部または一部を第三者に開示または提供し,もしくは漏洩してはならない。


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 上記約定によれば,本件秘密保持契約は,原被告間の「本件事業」に関するすべての交渉において提供または開示される情報および資料に適用されるものであり(第2条),本件秘密保持契約にいう秘密情報とは,「情報を開示する者が被開示者に対し,口頭,書面,電子メールまたは電子記憶媒体等その方法もしくは手段の如何を問わず,またその形態の有形無形をも問わず,開示者が被開示者に対して書面または電磁的記録をもって秘密である旨を明示したうえで開示または提供する営業情報,ノウハウ,技術情報および経営情報等一切の情報ならびに資料」をいい(第3条),「本件事業」とは被告の開発したLEDフラットパネル製品についての被告と原告とによる共同開発事業をいうのであるから(第1条),被告と原告とによる共同開発にかかるLEDフラットパネル製品である「SE型用特殊リフレクターフラッター」の原告と被告との共同開発は,本件秘密保持契約の対象となる事業に含まれ,原告は被告に対し,「SE型用特殊リフレクターフラッター」に関するすべての交渉において提供または開示される技術情報について本件秘密保持契約に基づく秘密保持義務を負うことが明らかである。  原告は,本件秘密保持契約を締結するにあたり当事者双方の念頭にあったのは「フラッタ技術」であり,「リフレクタ技術」は念頭になく,対象に含まれていないと主張する。しかし,本件秘密保持契約にいう秘密情報は,上記のとおり「一切の情報ならびに資料」(第3条)とされており,「フラッタ技術」に限られるとする根拠はない。
 ちなみに,乙1によれば,原告所属のAは,平成20年1月24日,被告に対し,今回の開発に係る原告の製品技術内容に関しても,本件秘密保持契約の趣旨と同様の扱いを求める電子メールを送信したことが認められ,原告としても引用発明製品が本件秘密保持契約の適用の対象となることを前提としていたことが認められる。原告は,完成品は本件秘密保持契約の適用外であると主張するが,特許出願までの間は契約対象の技術情報についての秘密保持義務があることは当然であって,原告の主張は理由がない。
 したがって,引用発明製品が原被告間で秘密を保つべき対象であったというべきであり,これと同旨の審決の認定判断は正当である。
 以上によれば,引用発明が本件特許の優先日前に公然知られた発明であるということはできないとの審決の判断に誤りはない。
 なお,原告は,320個もの引用発明製品が本件特許の優先日前である平成20年9月30日に原告へ納品されたことをもって引用発明製品が公知となったことを主張するが,原告が当事者の一方である本件秘密保持契約の対象として引用発明製品が含まれる以上,原告の主張には理由がない。この納品製品は,被告の主張によると,JR東日本の駅等で設置試験が行われたようであるが,この設置が本件優先日より前に行われたものとは認められないし,このことから,JR東日本の関係者に外形からみた引用発明製品の構成が本件優先日より前に知られたことまでは認められない。

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