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「音素索引多要素行列構造の英語と他言語の対訳辞書」事件

平成20年8月26日判決言渡

平成20年(行ケ)第10001 号

審決取消請求事件

平成20年6月12日口頭弁論終結

 

【本事案のお言葉】

 ある課題解決を目的とした技術的思想の創作が,その構成中に,人の精神活動,意思決定又は行動態様を含んでいたり,人の精神活動等と密接な関連性があったりする場合において,そのことのみを理由として,特許法2条1項所定の「発明」であることを否定すべきではなく,特許請求の範囲の記載全体を考察し,かつ,明細書等の記載を参酌して,自然法則の利用されている技術的思想の創作が課題解決の主要な手段として示されていると解される場合には,同項所定の「発明」に該当するというべきである。

(by裁判長裁判官 飯村敏明 さま)

 

■裁判所の判断(抜粋):

 特許法2条1項は,発明について,「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいうと規定する。したがって,ある課題解決を目的とした技術的思想の創作が,いかに,具体的であり有益かつ有用なものであったとしても,その課題解決に当たって,自然法則を利用した手段が何ら含まれていない場合には,そのような技術的思想の創作は,特許法2条1項所定の「発明」には該当しない。

 ところで,人は,自由に行動し,自己決定することができる存在であり,通常は,人の行動に対して,反復類型性を予見したり,期待することは不可能である。したがって,人の特定の精神活動(社会活動,文化活動,仕事,余暇の利用等あらゆる活動を含む。),意思決定,行動態様等に有益かつ有用な効果が認められる場合があったとしても,人の特定の精神活動,意思決定や行動態様等自体は,直ちには自然法則の利用とはいえないから,特許法2条1項所定の「発明」に該当しない。

 他方,どのような課題解決を目的とした技術的思想の創作であっても,人の精神活動,意思決定又は行動態様と無関係ではなく,また,人の精神活動等に有益・有用であったり,これを助けたり,これに置き換える手段を提供したりすることが通例であるといえるから,人の精神活動等が含まれているからといって,そのことのみを理由として,自然法則を利用した課題解決手法ではないとして,特許法2条1項所定の「発明」でないということはできない。

 以上のとおり,ある課題解決を目的とした技術的思想の創作が,その構成中に,人の精神活動,意思決定又は行動態様を含んでいたり,人の精神活動等と密接な関連性があったりする場合において,そのことのみを理由として,特許法2条1項所定の「発明」であることを否定すべきではなく,特許請求の範囲の記載全体を考察し,かつ,明細書等の記載を参酌して,自然法則の利用されている技術的思想の創作が課題解決の主要な手段として示されていると解される場合には,同項所定の「発明」に該当するというべきである。

 

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