「給与計算方法及び給与計算プログラム」事件

平成29年7月4日判決言渡 

同日原本領収 裁判所書記官

平成28年(行ケ)第10220号 

審決取消請求事件

口頭弁論終結日:平成29年6月13日

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本事案のお言葉:

”引用文献の「発明が解決しようとする課題」や「課題を解決するための手段」の欄に記載された事項と一致しない発明を引用発明として認定したとしても,直ちに違法とはいえない” (by 裁判長裁判官 髙部 眞規子 さま)

 

”原告は,本件審決は,合理的な理由を示すことなく,引用例の図1に明示された社労士端末及び税理士端末から目を背け,引用発明を誤って認定したものであり, 引用例に記載された事項を適切に参酌すれば,引用発明は,その課題を「中小企業 等ないし小規模事業者に対し,外部の専門家の関与の下で行われる給与計算等を円 滑にすること」と認定し,その構成を前記第3の1〔原告の主張〕のとおり認定す るのが相当である旨主張する。”

 

”確かに,引用例には,発明の目的は,複数の事業者と,税理士や社会保険労務士 のような専門知識を持った複数の専門家が,給与計算やその他の処理を円滑に行う ことができるようにするものであり(【0005】),同発明の給与計算システム及び 給与計算サーバ装置によれば,複数の事業者と,税理士や社会保険労務士のような 専門知識を持った複数の専門家を,情報ネットワークを通じて相互に接続すること によって,給与計算やその他の処理を円滑に行うことができること(【0011】), 発明の実施の形態として,複数の事業者端末と,複数の専門家端末と,給与データ ベースを有するサーバ装置とが情報ネットワークを通じて接続された給与システム であり,専門家端末で給与計算サーバ装置にアクセスし,給与計算を行うための固 定項目や変動項目のデータを登録するマスター登録を行い(【0018】~【002 1】),マスター登録された情報とタイムレコーダ5から取得した勤怠データとに基 づき,給与計算サーバ装置で給与計算を行い,給与担当者が,事業者端末で給与明 細書を確認した上で,給与振り込みデータを金融機関サーバに送信する(【0022】~【0025】,【0041】~【0043】,図7のS11~S20)ほか,専門家 が専門家端末を介して給与データベースを閲覧し(【0031】~【0033】),社 会保険手続や年末調整の処理を行うことができる(【0026】~【0030】,【0 044】,【0045】,図7のS21~S28)とする構成が記載されていることが 認められる。”

 

”しかし,引用文献が公開公報等の特許文献である場合,当該文献から認定される 発明は,特許請求の範囲に記載された発明に限られるものではなく,発明の詳細な 説明に記載された技術的内容全体が引用の対象となり得るものである。よって,引 用文献の「発明が解決しようとする課題」や「課題を解決するための手段」の欄に 記載された事項と一致しない発明を引用発明として認定したとしても,直ちに違法 とはいえない。

 

”そして,引用例において,社労士端末や税理士端末に係る事項を含まない,給与 計算に係る発明が記載されていることについては,上記(2)のとおりであるから,この発明を引用発明として認定することが誤りとはいえない。したがって,本件審決の認定に誤りはなく,原告の主張は採用できない。”

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