国家資格「第一級陸上無線技術士」を受けてみた件

はじめに

  • いわゆる「一陸技」の受験体験記を以下に記します。何かしら、ご参考になれば幸いです。

  • 「一陸技」とは、主として陸上の無線局の無線設備の技術的な操作を行うための国家資格をいいます。「一陸特」ではありませんので、ご注意ください。詳細は、以下のURLをご参照ください。

    公益財団法人 日本無線協会:電波と無線従事者

対象

  • ご参考までに、著者の属性を以下に記します。
    ざっくり言えば、無線通信技術の研究者・技術者ではありません。

  • 知財関係の仕事をしています(主として権利化業務に従事)。

  • 電気通信主任技術者(第一種伝送交換)を10年以上前に取得。
     + 一陸技の4科目のうち、「無線工学の基礎」「無線工学A」は免除を受けることができました。

  • 昨今、第5世代移動通信の話題を聞くようになったので、無線通信の勉強のため受験してみました。

道具

  • 吉川忠久著『第一級陸上無線技術士試験 やさしく学ぶ 無線工学B』(平成28年5月20日、オーム社
     + 過去問を理解する素養をお持ちの方なら必要ないかもしれませんが、当方は「お持ちでない」ので、本書をメインに取り組みました。
     + 表紙の裏などに、数学公式集や、アンテナ公式集が整理されていて、問題の解法を理解する上で必要な知識を再確認できて、大変助かりました。三角関数の変換なんて、これがなければピンとこなかったと思います。
     + ただし、当方が購入した版では、式にやや誤植が見受けられました。勉強を進めていくと気付くレベルの誤植ですので、重大な問題ではないと思いますが、念のため。

  • 吉川忠久著『1・2陸技受験教室③ 無線工学B(第2版)』(平成23年2月20日、東京電機大学出版局)
     + 上記オーム本と同じ著者による、無線工学Bの教本です。こちらがオリジナルだと思いますが、上記オーム本と概ね同じ内容です。こちらの方が、オーム本より情報量が若干多い箇所もある感じです。
     + 1頁当たりに記載されている文字数が、上記オーム本よりも凝縮されているため、より効率的に内容の把握が可能ですが、その分だけ文字間隔が若干狭く、ただでさえ小難しい内容なので、かなり圧迫感を感じました。
     + 公式集はついてませんので、自力で何とかなる方には向いているかもしれません。

  • 吉村和昭著『第一級陸上無線技術士試験 やさしく学ぶ 法規』(平成26年11月20日、オーム社
     + 電波法令の全体像を把握するために通読しました。過去問だけ回しても、全体像を把握できていなければ、面白さ半減です。本書はその手助けに有用と思います。工学Bと同様、東京電機大学出版局の教本に類似品(すいません。東京電機大学出版局さんの方が元祖だと思います)があります。両者の大きな違いは、はっきりいって文字の大きさです。オーム本の方が文字サイズが若干大きめです。目に優しいかもと思い、こちらを選びました。
     + 電波法令の全体像を既に把握されている方にとって、本書は必要ないかもしれません。

  • 吉川忠久著『2017−2018年版 第一級陸上無線技術士試験 吉川先生の過去問解答・解説集』(平成29年3月25日、オーム社
     + 一問毎に、問題と解説がセットになっていますので、解説を見ながら勉強するのに重宝しました。
     + 他の多くのサイトでも言及されていますように、教本のみでは心許ないので、過去問を何年分か確認すると良いです。

  • 『無線従事者国家試験問題解答集 第一級陸上無線技術士』(平成28年10月21日、情報通信振興会)
     + 表紙が格好いいです。机の上や、本棚のよく見える位置に置いておくと良い雰囲気を醸します。
     + 全ての計算問題に解説があるとは限りません。
     + 解説は、開催期毎にまとめて掲載されているので、集中して問題を解くことができますが、先に解説を見ながら勉強するスタイルには向かないと思います。

  • メモ帳
     + 計算問題の練習に、あると非常に便利です。
     + 一枚一枚、ペリペリと剥がして捨てることができるタイプのものを用意しました。

  • 暗記カード
     + 隙間時間を有効につかうために必須のツールだと思います。
     + 公式だけでなく、図解も書ける余裕があった方がいいので、若干大きめのものを用意しました。

  • ハンドグリップ
     + 試験時間に負けない筆力を出すために、握力トレーニングはかかせません。
     + 少々値が張りますが、評判の良い「Captains of Crush」を購入しました。
     + ただし、試験の前日は、本番で全力を出せるよう、握力トレーニングを控えました。

手順

  • 私の受験日は、平成29年7月11日(法規)、7月12日(無線工学B)です。それに向けて、以下のスケジュール感で準備を進めました。

  • 工学B@オーム本は全部で5章ありますので、各章を順に一週間で仕上げていきます。
     + 実際のスケジュールはこんな感じです:
      6月4日(日)〜 6月10日(土):第一章 アンテナの基礎理論
      6月11日(日)〜 6月17日(土):第二章 アンテナの実際
      6月18日(日)〜 6月24日(土):第三章 給電線と整合回路
      6月25日(日)〜 6月26日(月):第四章 電波伝搬
      6月27日(火)〜 6月28日(水):第五章 測定
     + 昼休みの約30分間、定時後の約1時間、が平日の主な勉強時間です。つまり、1.5時間/日の勉強ペースですが、上述のスケジュールで何とかなりました。週末は同居人の事情にもよりますが、概ね平日よりも若干多めに勉強時間を確保させて貰いました。
     + 過去問を回す勉強法を推奨するサイトが散見され、日程が迫るにつれ焦燥感がつのりましたが、無線工学Bの全体像の把握するため、教本での学習に専念しました。
     + 各章で出会った公式を、暗記カードにメモし、通勤時に歩きながら繰り返し参照するようにしました。これにより、過去問を実際に解いていないですが、過去問をみれば、どの公式が関係しそうか、徐々にわかるようになります。

  • 法規@オーム本は全部で7章ありますが、当然、計算問題はありませんので、単純に読み進めるだけす。
     + 当方の実際のスケジュールは以下の通りです:
      6月29日(木)〜 7月4日(火):全章
     + 暗記のポイントは、他の手続き法(例えば特許法)と同様です。
     + 例えば、
      ①「原則」と「例外」
      ②「届出制」と「許可制」の区別、
      ③「事前」(する場合は予め)と「事後」(した場合)の区別、
      ④「裁量規定」(することができる)と「強行規定」(しなければならない)の区別、
      ⑤「用語の定義」
        例)「電波の質」(電波法§28、無線設備規則§5〜§7):”電波の周波数の偏差及び高調波の強度”→「空中線電力」は電波の質に含まれない。
      ⑥ 各規定の「閾値」の値
        例)「再免許の申請」(無線局免許手続規則§17):(原則)”免許の有効期間満了前3箇月以上6箇月を超えない期間”
        例)「人工衛星局の送信空中線の指向方向」(電波法施行規則§32の3①):”対置静止衛星に解説する人工衛星局(一般公衆によって直接受信されるためのものを除く)の送信空中線の地球に対する最大輻射の方向は、公称されている指向方向に対して、0.3度又は主輻射の角度の幅10%のいずれか大きい角度の範囲内に、維持されなければならない。” → 一般公衆向けの場合は要件が厳しい(「公称されている指向方向に対して0.1度の範囲内に維持」)

 + 特殊なポイントとしては、
  ・「電波の主搬送波の変調の型式」
  ・「主搬送波を変調する信号の性質を表す記号」
  ・「伝送情報の型式を表す記号」
  に掲載されている各種記号の暗記があります。(電波法施行規則§4の2)
  ※アルファベット順に並べ直して、無線技術の流れを(独自に)想像しながら、アルファベットと型式との対応関係を記憶していくと、わりと覚えやすいです。

  • 試験直前期は、以下のように過去問を中心に準備を進めました:
     ■ 7月5日(水)〜 7月7日(金):無線工学Bの過去問(平成27年度を中心に)
     + 平成28年度の2期分については、問題を一読して、すぐに解説で学習する、という感じです。
     + 平成27年度以降については、徐々に、自分で考えて計算問題を解く量を増やしていきました。
     ■ 7月8日(土)〜 7月10日(月):法規の過去問(直近の2年間の過去問を中心に)
     + 工学Bと同様に、平成28年度の2期分については、まず解答をみて、正答を確認してから、問題文を読む、という感じです。その際、問われているポイントや、引っかけ問題の用語(問題中の間違いの語句)などを暗記カードにメモり、通勤時に繰り返し参照して、覚えるようにしました。

結果

  • 試験当日:
     + 外は非常に暑かったのですが、試験会場内は空調で寒いです。薄手のパーカーを持参してて正解でした。
     + 試験開始の15分前程に、解答シートと問題の配布が始まります。このタイミングで、教科書などの勉強ツールを鞄の中などにしまうように言われます。
     + 法規は、13:00〜13:48の時間で、全問題を二巡して、回答をチェック。その結果、B問で一枝の回答漏れに気付き、無事に全問回答。緊張していると、普段しなさそうなミスを犯しやすいことに気付かされます。試験当日は、落ち着いているようでいても、実は平常心が揺らいでいることを十分に自覚して、些細なことも繰り返しチェックすることの大切さを感じました。
     + 無線工学Bは、13:00〜15:25の時間で、全問題を二巡して、回答をチェック。計算式がわからない問題には、マークをつけて、すぐに次の問題に飛ばしていき、二巡目でじっくり考えるようにしました。

  • 自己採点:
     + 試験の一週間後に公開された解答速報による自己採点では、
       無線工学B:
       【A問】失点-5×2
       【B問】失点-1×4
       【合計】失点-14
       【得点】111点/125点満点(得点率約89%)
       法規:
       【A問】失点-5×2
       【B問】失点-1
       【合計】失点-11
       【得点】89点/100点満点

 + 無線工学B、法規ともに、合格ラインの6割に達したものの、惜しくも9割には届かず。
 + いけてると思った答が、案外ミスっていたため、反省。

効果

  • 試験対策を通じて、算数の基礎的体力を確実に向上させることができます。
     + 試験本番では、電卓の使用が不可であるため、数値計算のための掛け算、足し算、対数演算、ルート演算などを電卓なしで計算し、ミス無く正答を導く必要があります。そのため、試験対策では、紙と鉛筆で、アンテナ公式を用いて実際に自力で演算する訓練を行います。
     + その結果、試験対策を始める前と後とでは、数式に対する抵抗感が、若干備わったように感じます。

  • 家の屋根などに設置されているアンテナから、地デジ中継局(例えば東京スカイツリー)の方角がわかるようになります。
     + 地デジ中継局の開局情報はこちら
     総務省|関東総合通信局|デジタル中継局開局情報

まとめ

  • 手順に記しましたように、私の試験対策では、6月4日(日)から本格的な試験勉強を開始しました。別言すると、6月4日(日)に無線工学B@オーム本を入手しました。それでも何とかなったわけですが、本音を言えば、もう少し早く教材を入手して、勉強を開始しておけばよかったと反省しています。

  • 過去問を使った勉強は、試験直前の一週間だけでも十分だと思います。というのも、数年分の問題を眺めれば直ぐわかることですが、類似問題がわりと繰り返し出題されています。したがって、問題パターンとそれに関連する公式を覚えさえしてしまえば、同じ過去問を繰り返し解くような勉強方法は、効率が悪いように思います。

  • 紙と鉛筆をつかって真面目に計算するのは学生以来ですので、普段の生活では得がたいスリルがあり、とても楽しく受験できました。試験会場では、試験問題をめくる刹那に、紙の匂いと鉛筆のはしる音で、昔を懐かしむ思いで一杯になります。

  • 私の場合、「無線工学の基礎」「無線工学A」の2科目の免除を受けることができましたので、無線工学Bに集中して対策をとることができましたが、全科目を受験される方は、本当にすごいと思います。私もそうですが、働きながら勉強時間を確保することは、なかなか厳しいものがあり、いろいろな制約があるなかで、理想と現実の折り合いをつけていくことになります。これから受験される方は、暗記カードを活用するなど工夫して、最終合格にたどり着けるよう、是非頑張ってください。

以上